理系博士号

なぜ、研究をするのか? 

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研究の意味と価値


研究は面白い

私はウイルス学の研究をしています。
ウイルスによる病気を治すために、ウイルスそのものを理解し、治療薬を開発することを目指しています。

ですが、私の本当の興味はもっと根源的なところにあります。

  • ウイルスとは何だろう?
  • 生物とは何だろう?
  • 私たち人間とは何だろう?

興味は常に一定ではなく、フワフワと漂う存在です。
けれども共通しているのは、「何か面白いことはないだろうか?」という問いです。
今回の記事では、その「研究の面白さ」を少しでも伝えられたらと思います。


研究は美しい

研究者とは、常に考える人のことです。
実験は、考えを検証する手段。
論文は、成果を伝える方法。
本質的な研究者の仕事は「考えること」です。

人間の思考には限界がありません。
何千年、何億年の時間を飛び越えることもできるし、
「無」という存在を想像することさえできます。

山頂で自然を背景にルーペを持ち「大発見」と叫ぶ白衣の研究者

確かに研究には「役に立つ」ことが求められます。
しかし基礎研究は、一見すると役に立たないように見えることも多いのです。

たとえば「ウイルスの増える速度」を徹底的に調べる研究があります。
一見すると何の役に立つのか分かりません。

けれども、固有の増殖速度が分かれば診断に応用できます。
増殖のタイミングが分かれば薬を飲むタイミングを決められます。
最も遅くなる条件が分かれば、その増殖を抑える方法を探せます。

知識や情報は、応用しようと思えば無数の可能性を持っているのです。


研究の価値

研究成果は一度得られれば、記録として永遠に残ります。
人類の知識の体系に、あなたが見つけた一文が加わるのです。

しかし、知識は残るだけでは意味を持ちません。
人が意識して学び取り、
次の世代へ受け継ごうとするときに初めて「生きた知識」となるのです。

だからこそ、研究者の目標のひとつは「教科書に自分の発見を載せること」。
小さなことのようですが、
自分の知識が未来へ刻まれるのは、
とても大きな意味を持ちます。

羽ペンで本に記録を残す白衣の研究者

研究者は知の戦士であり、守り手です。
過去の知識を守るだけでなく、新しい知識を切り開きます。
人類がまだ到達していない「未知」の最前線に立つのです。


研究の厳しさ

もちろん研究は地味です。
何度も同じことを繰り返し、何年も実験系を組み立て、時には成果が一切出ないこともあります。

それでも研究を続けます。
もっと華やかで給料の高い仕事はいくらでもあるのに、研究を選ぶ。
それは人類社会にとって、かけがえのない営みだからです。

古い本を前に頭を抱え、研究に悩む白衣の研究者

人間の頭脳には限りがあります。
若く柔軟な時期にしかできない思考もあれば、円熟してこそできる発想もあります。
だからこそ、その限られた人生の中で、胸を躍らせる研究に挑む価値があるのです。


結びに

あなたの発見は教科書に載るかもしれません。
ノーベル賞につながるかもしれません。
人類社会を大きく変えるかもしれません。

そうした希望や不安を胸に秘めながら、研究をする。
それが研究者の生き方です。

「なぜ研究をするのか?」と聞かれたら、私はこう答えます。

私はウイルス研究に人生を賭けています。
ウイルスの神秘に近づき、その小さな一端を解き明かしたいと思っています。
そして、いつか後の研究者がこの発見を足がかりに、
人類のためになる成果へとつなげてくれることを願っています。

では、なぜその研究をしたのか?
それは――私がその研究を好きで、ワクワクし、心から愛しているからです。




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ABOUT ME
Doctor YouMe
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京都大学 理系博士  某 旧帝国大学 教官
Doctor YouMe。 京都大学 理系博士。  某 旧帝国大学 教官。 ウイルス研究で博士号を京都大学で取得。 現在は日本国内の某 旧帝国大学で教官をしています。 普段は学生の教育と研究室運営、研究を介護、育児、家事の傍ら行なっています。
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