博士課程を乗り切る方法

博士号取得のために対策しておけば良かったリスト、やらなくて良かったリスト
博士課程は研究に没頭できる貴重な時間です。しかし同時に、お金、人間関係、健康、そして将来設計まで、人生全体に強い影響を与える時期でもあります。
ここでは、私自身の経験をもとに「もっと対策しておけば良かったこと」と「やらなくて良かったこと」をリストにしました。これから博士課程に進もうとしている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
博士課程前に金銭感覚を鍛えておけばよかった

博士号を取る前の時期は、大事なサンプルを使った重要な実験や論文投稿が続く大切な時期です。そんなときに私は「今日はご褒美だから」と豪華な食事にお金を使うことが何度かありました。リフレッシュのつもりで使ったお金が、習慣になってしまったのです。
この「気分転換にお金を使う習慣」を変えるのは、本当に大変でした。
良かったのは月に一度のレイトショー(MOVIX京都)や、週に一度のスタバ(三条大橋)での読書。これらはコスパが良く、研究の気分転換にもなりました。
博士課程に入る前から、こうした「安定して気分転換できる習慣」を見つけておけば、ずっと楽に過ごせたと思います。
研究室以外に安心できる居場所を持っておけばよかった
大学の研究室は、とても閉鎖的な場所です。学部生までは数十人〜数百人の同級生がいましたが、博士課程では数人だけ。その狭い人間関係で悩むことが多々ありました。
例えば、同期が学会発表前でイライラして、周囲に当たり散らす時期がありました。研究室に入ってくるときにドアを足で蹴って開ける。何を言っても食ってかかってくる。喧嘩になる。そんな人と一緒に実験をするのは本当にしんどくて、私は朝、研究室に行くときに耳鳴りがしていました。
でも実験室は同じなので、距離を置くことはできません。だからこそ、外に相談できる相手や愚痴を言える場があれば、ずいぶん救われたはずです。研究室の外に居場所を持つことは、とても大事だと今になって思います。
育児や介護などライフプランを考えておけばよかった
家族の年齢や健康について、博士課程に入る前に真剣に考えてはいませんでした。けれど、怪我や病気は突然やってきます。そして年齢を重ねるほど、そうした確率は高くなります。
博士課程は延長すれば何年でも在籍できます。もっと良い雑誌に出したいと思えば、学位を取らずに研究を続けることもできます。ですがその間に、結婚や親の介護などのライフイベントが迫ってきます。
「早く稼がないと!」という焦りが生まれると、研究への集中力が削がれてしまう。ライフプランを真剣に考えておくことは、諸刃の剣ですが避けられない大事な準備です。
小さな副業をしておけば良かった
大学での研究は利益を追求するものではありません。ですが、研究費を審査する厚労省・文科省・経産省や企業・財団は利益を重視します。
もし「お金を稼ぐ経験」が少しでもあれば、研究の世界をより広い視点で見られます。副業で得られる副収入は心理的な安定にもつながり、純粋に楽しいものです。しかも副業は成果が出るまで数年かかります。博士課程に入る前から始めておけば良かったと強く思います。
運動習慣をつけておけばよかった

博士課程には体育の授業がありません。運動の習慣を失うと、メンタルの負担が一気に跳ね上がります。
私はストレス解消を「食べる」「買い物」に頼ってしまいました。その結果、体にも財布にも負担がかかりました。ジョギングやウォーキング、サイクリングなど、気軽にできる運動を博士課程に入る前から日常に組み込んでおけば、もっと心身を安定させられたと思います。
新しい実験を積極的にやっておけばよかった
新しい実験を教えてもらえるのは、学生の特権です。博士号を取ると、もはやプロの研究者と見なされ、簡単には技術を教えてもらえなくなります。オーサシップや成果の取り扱いも絡み、関係が複雑になるからです。
学生の間は事務仕事や授業も少なく、時間に余裕があります。だからこそ、もっと新しい実験に挑戦しておくべきでした。
マッチングアプリで遊ばなくてよかった
結婚相手を探す真剣な出会いとしてのマッチングはとても良いと思います。ですが、遊び目的でのマッチングアプリは非常に危険です。
博士課程は単調で地味な毎日です。そんなときに複数の相手とメッセージを送り合い、週に何度もデートを繰り返す生活をすれば、感覚が狂います。研究のペースは一気に崩れてしまいます。博士課程の間、遊び目的でマッチングアプリをやらなかったのは正解でした。
クラブや深夜の飲み会に行かなくてよかった

クラブや飲み会は華やかで楽しいものです。しかし多くは夜中に開催され、生活リズムを崩します。
生活リズムが崩れると、実験のペースは一気に落ちます。特に放任型の研究室では誰も修正してくれないので、自分で崩れていきます。博士課程の間、クラブや深夜の飲み会に行かなかったのは良い判断でした。
就職した友達と頻繁に会わなくてよかった
旧友と会うのは大好きです。昔話に花を咲かせ、愚痴や下ネタで笑い合う。最高の時間です。
でも、博士課程中は「自分は学生、相手は社会人」という立場の差を強烈に感じます。就職した友達はどんどん先に進み、結婚して、家を買って、子供が生まれる。それに比べて自分はまだ大学にいる。その現実はメンタルを削ります。
私も何度も楽しい気持ちと同時にしんどさを味わいました。だから頻繁には会いませんでした。ですが関係を断絶したわけではなく、博士号を取って就職してからは再び会うようになっています。
SNSを「見る専」にとどめてよかった
SNSは最高に面白いです。そして、バズれば仕事や収入につながる可能性すらあります。
けれど想像してください。ある日、自分のアカウントがバズってフォロワーが数万人、数十万人になったら? 次の日の研究室の掃除や実験なんて、吹っ飛んでしまうと思いませんか。
博士課程の間、SNSは投稿せず「見る専」にしておいたのは正解でした。
お洒落に時間を割かなくてよかった
私は博士課程の頃、服や身なりには全く興味がありませんでした。髪がボサボサでも、服がヨレヨレでも、大きな問題はないと思っていたのです。実際、私の所属していた研究室では、身なりを指摘されることは一切ありませんでした。評価されるのはデータと論文です。
指導教官が飲み会で「こんなことしてる場合じゃないでしょ」と不機嫌そうに言ったのを今も覚えています。身なりを整えるより研究に戻れ、という空気でした。
もちろん、清潔でいることは最低限のマナーです。ですが、お洒落は休日や学会のときで十分です。博士課程の間に無理をしてまでお洒落をする必要はありません。博士を取れば、周囲から専門家としての立場を求められ、自然とお洒落をする必要が出てきます。そのときに磨けば間に合います。
まとめ

博士課程は研究だけの時間ではありません。お金、人間関係、ライフプラン、健康。どれも人生に直結する大事な要素です。
入る前に少しでも準備をしておくだけで、博士課程の数年間をより健やかに、充実して過ごせます。
あなたなら、博士課程に臨む前にどんな準備をしますか?
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