理系博士号

不思議な、不思議な大学の研究室「コア時間」

研究発表をしている学生たち
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不思議な大学の研究室
 私が行なっている研究の仕事では、コア時間、という考え方があります。これは、その時間帯がコア(中心)の時間であり、その時間帯が研究活動の中心の時間帯である、ということです。多くの研究室では、9時付近~19時付近がコア時間になっていると思われます。なので、この時間帯では、研究室にいる必要があります。他の仕事場でも業務の中心となる時間帯はあると思います。今回は、大学の研究室という、ちょっと不思議で変な場所のコア時間について、簡単に説明したいと思います。

コア時間の理由
 最初に、なぜ9時付近から19時付近がコア時間になるのかを説明します。これは、単純に大学職員の多くの勤務時間帯がその時間帯だからです。多くの方が勘違いをされていますが、研究室の維持には多くの方の協力が必要です。そして、研究室は基本的に安全な場所ではありません。どんなことが起きるか分からない、未知の事を調べることが研究だからです。化学薬品やガスなどの扱い方によって危険になる物質を日常的に使っています。なので、何かがあった時、即座に対応できるように、職員がいる時間帯がコア時間になるのです。

研究室に危険は付き物
 そんな事故とかが起きるのか? と思われるかと思いますが、実際にはヒヤリとすることが度々起こります。朝、研究所に着くと、エレベーターホールで異臭がしたり(大半はオークレ関係)、冷凍庫か冷蔵庫のアラームがどこか遠くから聞こえてきたりします。また、実験室では、機械の作動直後に異音がして、緊急停止をさせたりすることがあります(遠心機のバランス関係)。大学の研究所は教育と研究を目的としています。なので、教育を受けている学生は、機械の扱いが完璧ではありませんので、ヒヤリとすることがあるのです。

研究発表と雑誌紹介
 コア時間には他にも理由があります。研究発表と雑誌紹介があります。研究発表と言うと、仰々しいですが、月に1回など周期的に研究の進捗状況を研究室の他のメンバーに発表するのです。だいたい、研究室の近くの建物の会議室やセミナー室を使うことが多いと思います。発表時間はだいたい5分~2時間とかです。これは全体ではなく、一人当りです。開催頻度が多かったり、就活や授業が忙しかったりして実験ができなくてデータが全然無かったりすると、「今日はデータがありません」で終わる場合があります。海外の学会に行った人が学会の報告と称して、研究内容と観光内容を発表したりすることもあります(これはだいたいしらけます)。さらには、論文投稿中の論文内容を最初から最後まで発表する人もいます。そして、議論や研究指導が何かしらの理由で白熱すると発表時間は長くなる傾向があります。話はそれますが、研究発表会での長時間の研究指導はやり方を注意しないと、学生のメンタルに大きな負担をかけてしまう場合があります。
論文発表は基本的に、他の研究室が出した研究論文を読んで、まとめて、分かりやすく発表する機会です。これによって、論文を読むこと、研究分野をまとめることを学んだりします。話はそれますが、そういった発表の機会を上手に使える学生さんは伸びます。論文発表をすることで定期的に論文を読み、それを発表することをトレーニングします。人に教えられるほど論文を読み込むことで、論文を理解することができます。論文を理解していないと「この実験条件は何か?」 「なぜ、Fig3aと結果が矛盾しているのか? 」などの質問に答えることができません。

 今回は研究室のコア時間についてをチラッとだけ、見てきました。もしかしたら、この研究室文化は今後、無くなってしまうかもしれません。そうなると少し寂しいですね。

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Doctor YouMe
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京都大学 理系博士/基礎ウイルス研究者
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