真面目な人のための介護・育児・仕事の両立ガイド

～完璧を求めず、自分らしく生きるために～

1. はじめに：あなたは十分頑張っています

この記事を読んでいるあなたは、きっと毎日を必死に過ごしているでしょう。介護、育児、仕事…どれも大切で、どれも手を抜けないと感じているかもしれません。

まず最初にお伝えしたいのは、あなたは既に十分頑張っているということです。

日本人は本当に真面目で頑張り屋です。自分が限界でも、周りのために我慢し、責任を一人で背負ってしまいがちです。「私だけは大丈夫」「まだ無理してない」と思っていませんか？

そんなあなたに、こう言わせてください。

「そう！その通り！私は精一杯頑張っている！この調子で頑張れば、きっと乗り越えられる！」

これが、今のあなたに必要な正しいメンタルなのです。

この記事は、時短グッズや効率化テクニックの紹介ではありません。完璧を目指すあまりに疲れ果ててしまった心を、少し楽にするための考え方をお伝えします。

2. 現実を見つめる：完璧な両立は存在しない

両立の真の意味を考え直す

「介護・育児・仕事の両立」という言葉には、実は落とし穴があります。

本当に両立すべきは、**「自分自身の人生」と「ケアする責任」**です。あなた自身の健康、休息、趣味の時間も、同じように大切な要素なのです。

自分を犠牲にし続けては、長期的に見ても高確率で破綻してしまいます。

データが示す現実

現在、多くの人が同じような困難を抱えています。

• 厚生労働省の調査によると、介護と仕事を両立している人の約4割が「両立は困難」と回答
• 育児期の女性の約6割が「時間が足りない」と感じている
• ダブルケア（育児と介護の同時進行）世帯は推定約25万世帯

これらの数字は、あなたが感じている困難が決して特別なものではないことを示しています。多くの人が同じ状況で頑張っているのです。

3. 完璧主義の罠から抜け出す

なぜ効率化だけでは解決しないのか

真面目な人ほど「もっと効率的にできるはず」と考えがちです。しかし、効率化には限界があります。

• 時短家電で浮いた時間は、他のタスクに使われがち
• アプリやAIツールも、使いこなすまでに時間がかかる
• 根本的な問題は、100点満点を求める心の在り方

つまり、新しいツール（家電、アプリ）を導入して時間の収入を増やしても、時間の支出をコントロールしないと追いつかないということです。

完璧主義がもたらすもの

完璧主義は、以下のような状況を生み出します。

• 常に「まだ足りない」という焦燥感
• 小さなミスへの過度な自責
• 周囲の助けを求めることへの罪悪感
• 結果的に燃え尽きてしまうリスク

この状況を変えるためには、意識的に基準を現実的に調整する必要があります。

4. 社会的背景を理解する

現代日本の構造的問題

私たちが直面している困難は、個人の努力不足ではありません。社会構造そのものに原因があります。

社会構造の変化

• 核家族化により、親族のサポートが得にくい
• 共働き世帯の増加（1985年：30.8% → 2020年：64.4%）
• 高齢化により介護期間が長期化

制度の限界

• 育児・介護休業制度の認知度・活用率の低さ
• 職場環境の理解不足
• 地域コミュニティの希薄化

これらは個人の力だけでは変えられない現実です。だからこそ、自分にできる範囲で工夫していくことが大切なのです。

5. 実体験から学ぶ：ケアが重なる現実

筆者の体験より

私自身、親族の介護と幼児の育児、研究職の仕事を同時に抱えている「トリプルケア」状況を経験しています。

直面した課題

• 平日は仕事と育児と介護、休日は溜まった家事と育児と介護
• プライベートな時間が全くない状況
• 職場での理解不足と評価への不安

気づいたこと

• 周囲に助けを求めても、皆それぞれ余裕がない
• 完璧を目指すと、結果的に全てが中途半端になる
• 自分の基準を見直し、現実的に調整することで、かえって大切なことに集中できる

この経験から、現実的な対処法の重要性を痛感しました。

6. 実践的アプローチ：「及第点主義」のすすめ

基本的な考え方

100点満点ではなく、55点で合格という発想に転換しましょう。

これは基準を下げるのではなく、状況に応じた現実的な調整です。特に、衣食住の三要素がとても重要です。なぜなら、私たちの生活は衣食住の維持に多大な時間と集中力を使っているからです。

衣服について

従来の考え方

• 毎日違う服を着る
• アイロンがけは必須
• 季節ごとに新しい服を購入

及第点主義の考え方

• 清潔であれば、同じ服を2日続けて着てもOK
• シワになりにくい素材を選ぶ
• 洗濯→乾燥→そのまま着用のサイクルで十分

これらは手抜きではなく、状況に応じた賢い調整です。

住環境について

従来の考え方

• 常に整理整頓された部屋
• 来客に恥ずかしくない状態を維持
• 掃除は毎日行う

及第点主義の考え方

• 生活に支障がなければ、多少散らかっていても大丈夫
• 「人が呼べる状態」は特別な時だけ
• 安全で衛生的であることが最優先

これは怠けているのではなく、限られた時間とエネルギーの賢い配分です。

食事について

従来の考え方

• 栄養バランスを考えた手作り料理
• 毎食異なるメニュー
• 添加物の少ない食材選び

及第点主義の考え方

• 基本的な栄養（炭水化物、塩分、水分）がとれていれば合格
• おにぎりやパンなど、簡単なものでも立派な食事
• 心と時間に余裕ができてから、食事の質を向上させる

これは栄養を軽視しているのではなく、今の状況に応じた現実的な選択です。

7. 心のケアと長期的な視点

メンタルヘルスを最優先に

ケアの責任を背負う人は、常にストレス状態にあります。以下のサインがあるときは要注意です。

危険なサイン

• 些細なことでイライラする
• 睡眠の質が悪い
• 食欲がない、または過食気味
• 将来に希望が持てない

これらの症状があるときは、メンタルの調整を最優先にしてください。

長期的な視点を持つ

困難な状況にあるとき、忘れがちな大切な視点があります。

• 介護も育児も、永続的ではない
• 今の状況は「期間限定」であることを忘れずに
• 自分の人生設計も同時に考える

この視点を持つことで、現在の困難を乗り越える力が湧いてきます。

8. まとめ：まず自分にできる調整を

人に助けを求めることは、それ自体が大きな労力です。相手の都合を確認し、状況を説明し、お礼を考え、断られるリスクを負う。限界状態のあなたに、そんな余計な負担は必要ありません。

今日から自分にできること

• 基準を現実的に調整する – 誰の許可も説明も不要
• 状況に応じて手を抜く – 周りの目を気にしない
• 自分への要求を緩める – 罪悪感を感じる必要なし
• やらないことを決める – 完璧主義を手放す

これらは怠けているのではなく、限られた状況での賢い選択です。

人に頼るのはその後

少し余裕ができてから、初めて人に助けを求めればいい。余裕がない状態で無理に頼ろうとすると、かえってエネルギーを消耗するだけです。

最後に

あなたは誰の役に立たなくても、完璧じゃなくても、生きているだけで十分価値があります。

社会が変わるのを待つ必要はありません。周りの理解を得る必要もありません。

今、この瞬間から、基準を現実的に調整してください。

完璧を目指して0点になるより、誰にも文句を言われない55点で、静かに生き延びていく方がずっと賢い選択です。

Doctor YouMe

京都大学　理系博士 　某 旧帝国大学　教官

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Doctor YouMe。 京都大学　理系博士。　 某 旧帝国大学　教官。 ウイルス研究で博士号を京都大学で取得。 現在は日本国内の某　旧帝国大学で教官をしています。 普段は学生の教育と研究室運営、研究を介護、育児、家事の傍ら行なっています。