新型と変異型(株)の違い
正体が分かればおそれは減る
最近、RSウイルスやマイコプラズマ肺炎、インフルエンザウイルスの流行についての情報が色んなメディアから出ています。そのたびに、新型コロナウイルスと比較され、また、大流行するのではないのか? 危険なのではないか? という不安が皆さんの頭をよぎると思います。今回は新型と変異株についての説明をして、どちらがどう違うのか? そして、それぞれ、何に気をつけたら良いのか考えてみたいと思います。人間が最も恐れを抱くのは、恐れの対象がハッキリ見えない時です。暗闇を灯りで照らせば、恐くはありません。
例えば、新型は体型。変異株は髪型
新型コロナウイルスは従来型のコロナウイルスとは全く違うウイルスでした。確かにコロナウイルスとしての似た特徴は持っていましたが、配列が全く違ったのです。
では、変異株よりも新型の方がいつもこわいのか? と聞くとそういうわけではありません。新型は遺伝子が大きく違います。ですが、遺伝子が大きく変わるのは、ウイルスにとってもめっちゃしんどいんです。例えて言うなら、新型とは、体型を変えることです。細い方が筋肉を増やして重量級になったりすることです。一方で、変異株とは、髪型や髪色を変えることです。ロングの人がショートになったり、白髪を紫に染めたりすることです。なので、新型になるには時間も労力もかかります。
新型はものすごーくまれ
感覚的には、私たちが一生涯の内に新型に出会う頻度はおそらく両手に収まる範囲だと思われます。もちろん、ウイルスの変異は日常的に起こっていることであり、今、この瞬間も新型は生まれています。ですが、その新たに出現した新型が私たちの世界で目に見えるようになるには、その新型が増えやすかったり、特徴が無いと無理です。ウイルスは基本的に数百nmの世界であり、どう頑張っても肉眼では見えないからです。なので、私たちが新型を認識できるのは、新型が発生する、その新型が増える、必要があります。
新型のおそろしいところ
新型ウイルスが出てきたとき、最も困るのはワクチンや抗ウイルス薬が使えなくなることだと思われています。それもありますが、一番ヤバいのは「そこまで危険と思っていなかったウイルスで新型ウイルスが発生する」ということです。新型コロナウイルスはまさにそれでした。確かにSARSやMERSはありましたが、ワクチンや抗ウイルス薬の開発はそこまで急ピッチには進んでいませんでした。研究がされていない、というのはそもそも実験設備や実験系、研究者の経験がないということです。ウイルスの実験ってみなさんが思っているよりもものすごく不安定で、神経を使う実験なんです。
変異株はしょっちゅう出てきてる
一方で、私たちが一生涯の内に変異株に出会う頻度は半年に一回ぐらいのペースだと思います。もっと早いかもしれません。なぜなら、変異の早いRNAウイルスでは、感染している最中に、身体の中で変異株が生まれてきているからです。なので、スピードとしては、変異株は最短、数時間の単位(律速はポリメラーゼとリボソーム反応かと)だと思われます。一方の新型は数ヶ月から、数年の単位だと思われます。なぜ、新型の時間範囲がこれほど広いかと言いますと。今まで誰も、新型の人為的な発生実験を行なっていないからです。
変異株のおそろしいところ
変異株でヤバいのは、感染している患者の体内で変異株が発生することです。新型とは違い、あまりにも発生頻度が早いから起きることです。そして、これで最もやばいのは薬剤耐性株です。だから、抗生物質や抗ウイルス薬は薬を飲みきるように言われるのはそのためです。実は、人類はある意味、チキンレースをしているのです。ワクチン、抗ウイルス薬の開発スピードが速いか、変異株が流行するのが早いのか。
まとめ
復習になりますが、新型とは体型が変わるほどの大きな変化。変異株は髪型が変わるほどの小さな変化です。そして、新型は起こるのに時間がかかるが、変異株は起こるのに時間はかからない、とうことです。そして、今、話題になっているRSウイルスやマイクプラズマ肺炎、インフルエンザウイルスは全て新型ではないと推測されています。