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インフルエンザウイルスに負けないための基礎知識

インフルエンザ感染によって身体がしんどい女性
doctoryoume23

インフルをなめたらアカン
 冬のウイルスとして長らく王者として君臨していたのがインフルエンザウイルスです。日本ではインフルとか、インフルエンザと呼ばれています。先ず大前提として覚えて欲しいのはインフはヤバいです。感染したらめっちゃしんどいです。特にコロナの間、インフルに感染した人が少ないので、多くの方は久しくインフに感染していないと思います。なので、久しぶりに感染したらインフはとてもしんどいです。しかし、インフルは予防法や抗ウイルス薬、ワクチンも開発されています。なので、しっかり対策することができます。この記事では、誰もが気軽にできる対策をウイルス学の見地から紹介することを目的としています。ワクチンは有効の手段であると思いますが、年齢、持病、職業など置かれた状況によってワクチンを打つべきか判断が分かれます。なので、ここではワクチンについては大きく推奨することはしません(ワクチンそのものを否定しているわけではありません)。
 何度も書きますが、インフルを侮らないでください。インフルはヤバくなると肺炎、気管支炎、挙げ句の果てには脳炎にもなり、死亡する病気です。「インフル?大丈夫やろ? アルコール消毒にもなるし、飲み会でアルコールを沢山飲めばエエやん! 」は間違いです。

インフルのざっくりした基礎
 主なインフルの感染方法は咳とクシャミです。なので、それらを防ぐ事が予防の最重要になります。よって、私たちがコロナの時に嫌になるほどやった適切な「手洗い」「マスク」「3密回避」で十分に防ぐことができます。どのウイルスでも同じですが、感染しないことが最も大事なことです。薬は高価ですし、身体にとって必ずしも良いとは限らないからです。インフルエンザウイルスそれ自体はそれほど強いウイルスではありませんので、コロナと同じく、エタノールを適切に使うことでウイルスを破壊することができます。

抗ウイルス薬について
 インフルも含めて一部のウイルスに対しては抗ウイルス薬が開発されています。抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑えることを目的として開発された薬です。非常に強力にウイルスを抑える薬もあります。注意してほしいのは、薬によっては薬剤耐性ウイルスが発生してしまうことです。特にインフルエンザウイルスのようなRNAウイルスはDNAウイルスと比べて変異が早く、薬剤耐性を獲得しやすい傾向があります。なので、抗ウイルス薬は飲むタイミング、飲み終えるタイミングを特に注意して、医師、薬剤師の指示をしっかり守ってください。忘れないでのほしいのは抗ウイルス薬を開発するのは大変ですし、開発の歴史は短いです。なので、薬剤耐性ウイルスが何度も発生してしまうと、やがては使える抗ウイルス薬の選択肢が無くなってしまいます。抗ウイルス薬の開発はどんなに早くても数年かかりますが、薬剤耐性ウイルスの発生は早いと数日から数週間です(理論上ではおそらく数時間)。なので、繰返しになりますが、抗ウイルス薬を使うときは用量用法を正しく守ってください。

迷ったら相談、受診
ここまで読んで感じられたと思いますが、インフルは人類が長い間研究をしてきて対策を練ってきたウイルスです。対処の仕方がしっかりと分かっているウイルスなので、もちろん油断大敵ですが、もの凄く不安に思われる必要はありません。インフルの潜伏期間は1~4日とされています。主な症状は発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛、咳、鼻水があります。小さなお子さんがおられて、特に受診を迷った場合や夜間・休日の場合は、「こどもの救急(http://kodomo-qq.jp/)」などの関係Webサイトを参照したり、#8000(こども医療相談)にご相談ください。

インフル流行情報には落ち着いた行動を
 インフルエンザやアデノウイルス、コロナ、マイコプラズマが世界各地で流行している情報があります。しかし、そもそも冬は呼吸器系の感染が拡大しやすい時期ですし、免疫が薄れていて感染が拡大する可能性はあります。ですが、新型コロナと違うのは今、感染が大きく報道されているのは「新型」ではないとされています。つまり、インフルにしても、アデノウイルスにしても、マイコプラズマにしても、今まで流行していたのと大きな違いはないので、もちろん、楽観視はよくありませんが、めっちゃ不安にならなくて大丈夫です。

もしも、新型インフルエンザが発生したら
 新型コロナウイルスの発生後、多くの人が「インフルエンザウイルスでも新型が発生したら大変なことになる」と危惧されています。その気持ちはよく分かりますが、私は2019年の新型コロナウイルスの大流行と大混乱はインフルエンザウイルスでは起こりにくいと思います。その理由は、インフルエンザウイルスは抗ウイルス薬やワクチンなどが既に存在しており、さらにインフルエンザウイルスを専門とするウイルス研究者、医師が世界各地におり、ウイルス学的な解析方法などが既に確立されていることです。なので、簡単に言えば、新型インフルエンザウイルスが発生しても迎撃態勢は十分である、ということです(もちろん、大規模な自然災害や戦争などによって、世界的なインフルエンザウイルスに対する迎撃態勢が崩れてしまえば話は別です)。さらに言うと、新型インフルエンザウイルスが発生することと、新型インフルエンザウイルスが大流行することは全く話が違います、詳しく知りたい方は、

新型と変異(株)の違い についての記事をご覧ください。

インフルエンザウイルス粒子の概略

インフルエンザウイルスのウイルス学的な基礎知識
 もっと知りたい方へ専門的な話です。インフルエンザウイルスはカプシドを持ちませんが、エンベロープを持つウイルスです。14,000塩基の一本のマイナス鎖RNAをゲノムとして持ちます。ウイルス粒子の大きさは80 nmです。そして、インフルエンザウイルスが持つ珍しい特徴の一つがゲノムそのものにあります。インフルエンザウイルスの14,000塩基の一本鎖マイナス鎖RNAは8分節です。つまり、ゲノムが8個に分かれているのです。これは珍しいです。この8個に分かれていることが、インフルエンザウイルスの強みの一つです。

参考文献・サイト
「インフルエンザとは」
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html

「インフルエンザ(総合ページ)」
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html

「 Influenza (Flu) 」
Centers for Disease Control and Prevention, Atlanta, Georgia, United States of America.
https://www.cdc.gov/flu/index.html

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京都大学 理系博士/基礎ウイルス研究者
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